2011年4月30日土曜日

アメリカの大学のポジションについて

アメリカの大学のポジションは日本の大学とは正確には対応しないようだ。大学システムの違いもある。アメリカの大学に留学しても、どうもポジションのことはよくわからないまま帰ってしまうことも多いようだ。特に学生として留学していると、先生は皆Dr.で、Professorという肩書きも、Associate ProfessorとかAssistant Professorとか、Research Professorとかいっぱいあり、さらには若いResearch AssociateとかResearch Assistantとか、大学によってはResearch ScientistとかResearcherとかいうポジションの人がいたりもして、何がなんだかわかりにくい。

まず、アメリカの大学の研究教育関連のポジションを大別すると、テニュア、ノンテニュアの二つに分けられる。テニュア(Tenure)は終身雇用である。定年はないので、自分がリタイアすると決めるまで、いくつになっても現役である。何も付いていないProfessorというポジションは、Full Professorとも呼ばれ、ほぼ例外なくテニュアである。さらに大学によってはDistinguished Professorなどという名誉職がある。学会などの名誉会員、フェローなどと似ていて、賞に近い。以上は現役のポジションだが、リタイヤ後の名誉職として、Emeritus Professorがあり、日本で言うところの名誉教授と同等である。

次に、縦のランクで言うと、Assistant→Associate→Senior/何もなし、の順に高くなる。テニュアのProfessorの場合で言うと、Assistant Professor→Associate Professor→Professorの順で高くなる。Researcherの場合だと、Assistant Researcher→Associate Researcher→Senior Researcherの順で高くなる。ProfessorやResearcherの部分を、Research ScientistとかResearch Professorで置き換えれば、それぞれのポジションの縦のランクに対応する。これらはすべて、いわゆるFacultyポジションであり、多くの大学ではPIとなれる(テニュアトラックかテニュアでないとPIにはなれないという大学も一部あるようだ)。PIというのは、Principal Investigatorの頭文字で、いわゆる自分の研究室を持つ、ということに当たる。競争的研究資金(グラント)の申請を独立して行える身分である。Postdocや研究助手などは微妙なポジションで、Facultyポジションとみなされることはあっても、通常PIにはれない。多くの場合、Research Associateはポスドク、Research Assistantは博士号を持たない研究助手である。Associateが付いているからえらい、というのは間違った認識である。

テニュアに至る道は、原則として、テニュアトラックとして採用されてテニュア審査に合格するか、シニアなProfessorがいきなりテニュアとして採用されるか二通りである。例外的に、業績が著しいノンテニュアのResearch Professorが他大学等からヘッドハントされそうになった際、引き止めるためにカウンターオファーとしてテニュアをオファーするようなこともあるかもしれない。

誤解が多いようだが、テニュアトラックは、テニュアではない。テニュアトラックは文字通りテニュアへの途上であって、将来テニュア審査を受けなければならない。逆に言うと、テニュア審査はテニュアトラックの教員しか受けることができない。このため、ノンテニュアのResearch Professorがテニュア審査を受けることはできない。テニュア審査の合格率は大学によって異なるようだが、通常のResearch Universityでは7割程度と言われている。一部、HarvardやMITなどのトップ大学では、様子は全く異なるようだ。大学としても、多額の援助をして雇っているテニュアトラック教員が、テニュア審査に失敗されると損害が大きいので、テニュア審査に合格するよう良い業績を挙げられるように様々な支援をする。スタートアップファンドに始まり、カウンセリング等、様々な形で若いAssitant Professorの成功を助ける。

Assistant Professorはまず例外なくテニュアトラックである。5年くらいするとテニュア審査を受け、合格すればテニュアのAssociate ProfessorにPromotionされる。これが典型的なテニュアへの道。このため、Associate Professorというとテニュアな場合が多い。しかし、テニュアトラックのAssociate Professorもいる。これは、テニュアトラック公募の採用時点でAssociate Professorにふさわしい業績がある場合に起こる。この場合も数年以内にテニュア審査を受け、合格すれば、テニュアのProfessorにPromotionされる。テニュア審査に失敗すると、Promotionはなく、1年以内程度に大学を出ていかなければならない。いわゆる首である。シビアなものだ。

ノンテニュアトラックのポジションには、二通りある。いわゆるResearchトラックというものと、Lecturerのような授業を教える教員である。Researchトラックは、Research ProfessorやResearch Scientist、またはResearcherのポジションである。テニュア審査はないが、Promotionはある。Promotionのやり方は、自分が上のランクに相当すると思った時点で自己申請する。すると、複数のFacultyメンバーで構成される審査委員会で調査が行われ、Promotionの妥当性について議論、その結果が学部長や学長といった人事権者に報告される。この結果が人事権者によって覆されることはまずないから、委員会で推薦されればほぼPromotionは決まる。それぞれAssistant Researcher, Associate Researcher, Senior Researcherのランクごとに必要とされる業績が定義されているから、これに従う。Assistantの場合は過去の業績はあまり必要とされず、通常のPostdoc程度の業績で十分だが、Senior Researcherともなると、その分野では世界で名が知れていて、論文も多数あって、プロジェクトを複数抱えているようなPIであることが要求される。

テニュア(トラック)の教員は、大学の既定経費(ハードマネー)でまかなわれる。州立大学の場合は州政府予算が当てられる。ノンテニュアトラックの教員は、多くがいわゆるソフトマネー、競争的研究資金でまかなわれ、大学の財政負担はまったくないか、あっても少ない。多くの競争的資金を持つノンテニュアトラック教員がいれば、大学としてはそのオーバーヘッド(事務経費)によりむしろ儲かる。Lecturerの場合は既定経費でまかなわれることもあるかもしれないが、あくまでも授業の経費である。

2011年4月16日土曜日

トライアスロンのきっかけ

昔から水泳は苦手で、小学生の頃どうにかこうにか25メートル泳げた程度、高校では授業でバタフライ25メートルのテストがあったが、おまけで足ひれを付けさせてもらったにもかかわらずゴールできず。それから15年以上のブランクを経て健康診断対策に始めた水泳は、最初は25メートル平泳ぎでゼーゼーいって翌日は激しい筋肉痛。ここからのスタートだった。

だんだん平泳ぎは継続的に泳げるようになったが、それでもクロールをすると25メートルで息が上がる。25メートルプールで平泳ぎ3往復の間に1回片道だけクロールを混ぜることから始め、だんだんクロールの割合を増やし、そのうち片道クロール片道平泳ぎで継続できるようになった。それからクロールが連続できるようになるまではすぐのことで、一旦できるようになると、腹が減らないかぎり永久的にクロールで泳ぎ続けられるようになった。

そうすると、単に泳いでいるだけではだんだん飽きてくる。それで、何かないかなあと思い立ったのがトライアスロン。試しに走ってみると、2キロ走っただけで翌日筋肉痛で歩けない。膝も痛くなって、大丈夫かなあ、と心配になる。水泳ならずっと続けられるし、おかげで心肺は強くて、全然息は上がらないのに、足が極端に弱いのだ。じわじわと継続して、だんだんと走れるようになり、何ヶ月かすると、走る方もほぼ永久的に出来るようになった。中学生高校生の頃、持久走といえば辛いしんどい、誰が好き好んで走るものか、と思っていたが、いま走ってみると、これが存外気持ちが良い。頑張って走るんじゃなくて、風を感じ、季節の変化を感じ、日々の座り仕事で使わない体を動かし、淀んだ血流を盛んにし、疲れた精神を癒す、そうやって気軽に走る。そうすると、走るってことがそれ自体でいかに清々しくて気分の良いものかを痛感。新たな発見である。トライアスロンを意識して始めたランニングや自転車も、やってみればそれ自体がとても楽しいのだ。

その後、ハーフマラソン、ODのトライアスロン、マラソンと経験。何度かレースをやると、目に見えて遅いスイムを克服したい、とか、もっと距離を伸ばしたい、とか欲目が出る。もうしばらくは楽しめそうだ。